大牟田市民にとって記憶に焼き付いているのが、市全域で大規模な水害が発生し尊い命が失われた2020年(令和2年)7月豪雨です。当時、市内では24時間降水量が400ミリを超え、避難所自体が孤立するなど深刻な爪痕を残しました。
当時の被災手記や住民座談会の記録、公の記録で語られた市民の生の声には、現場の逼迫した実態が赤裸々に刻まれています。
「雨雲レーダーで大雨なのは知っていたが、外を見ても水たまり程度だった。しかし、満潮時刻を迎えた深夜のわずか30分で道路が川に変わり、玄関ドアが水圧で開かなくなった」(大牟田市吉野地区・住民手記より)
「車で高台へ避難しようと発進させたが、アンダーパスや路面の冠水にタイヤを取られ、車を乗り捨てて命からがら泳ぐように避難した」(避難者インタビューより)
現在の大牟田市コミュニティやSNS上でも、台風シーズンや梅雨時期になると「雨雲レーダーの雲の厚みだけでなく、必ず三池港の潮位を見ろ」「吉野や三池、船津方面の道路はレーダーが黄色でもアンダーパスが沈む」といった、被災経験に基づく切実な投稿が飛び交います。行政の河川改修や排水機能強化が進められているものの、想定を超える雨雲が直撃した際には、ハード整備の限界を超える水があふれ出すのが現場の偽らざる実態です。