エアコンが動かない場合、最初の分岐点は「リモコンが赤外線信号を出しているか否か」の特定です。肉眼では不可視光線である赤外線(波長約940nm)ですが、デジタルカメラの受光素子(CMOSセンサー)を通すと、淡い紫色または白色の光として可視化されます。
この特性を利用したスマホカメラ赤外線確認法は、家電修理の現場でも最初に実践される確実な簡易テストです。ただし、近年のスマートフォン(特にiPhoneのメインカメラなど)には高性能な赤外線カットフィルターが装着されており、背面カメラでは発光を捉えにくいケースが増えています。そのため、フィルターの効力が比較的弱い「インカメラ(画面側の自撮り用カメラ)」を起動し、送信部先端をレンズに向けてリモコンの運転ボタンを長押ししてください。画面越しに先端がピカピカと点滅していれば、リモコンの送信機能自体は正常に生きています。
リモコンから発光が確認できたにもかかわらずエアコンが反応しない場合は、本体側の受信異常が疑われます。その際、室温の急激な変化を防ぐための最優先策がエアコン本体の応急運転ボタンの操作です。室内機の前面パネルを開けた右下、あるいはフィルター枠の周辺に配置された「応急運転」「自動運転」と書かれた物理スイッチを爪楊枝や指先で1回短押しします。これで設定温度25度前後の自動運転が開始されれば、コンプレッサーやファンなどの冷却・温風機構自体に致命的な破損はないと判断できます。
ここで注意すべき現場の落とし穴として、応急運転ボタンの「長押し」は避けてください。多くの機種で5秒以上の長押しは業者向けの「テスト運転モード(強制冷房)」やポンプダウン運転に割り当てられており、冷えすぎや思わぬエラー停止を引き起こすリスクがあります。