御菓子つちやの歴史を語る上で欠かせないのが、岐阜県特産の「堂上蜂屋柿(どうじょうはちやがき)」の深い甘みを凝縮させた柿羊羹槌屋の存在です。4代目・右助が天保9年(1838年)に創製して以来、半割の天然青竹に流し込まれた独特の意匠は、職人の手わざと風土が結実した逸品として皇室献上や全国菓子大博覧会での栄誉を重ねてきました。
この重厚な古典和菓子の土台の上に、若き職人たちの柔軟な感性が加わって誕生したのが「みずのいろ」です。大垣の豊かな地下水、水滴の透明感、そして四季の移ろいを表現したこの菓子は、寒天と砂糖を煮詰めて乾燥させる伝統技法「干錦玉(ほしきんぎょく)」を極限まで薄く仕上げることで成立しています。ハーブや果実の天然色素で色付けされた5色の薄氷のような円盤は、伝統の看板に安住しない同店の挑戦心を象徴しています。
岐阜大垣銘菓お土産のコーナーにおいて、重厚な竹筒羊羹の隣に並ぶアクリルケース入りの現代的な造形は、一見すると対極に位置するように映ります。しかし、現場で職人の証言を紐解くと「水と自然の恵みに敬意を払う」という根底のフィロソフィーは完全に一致しており、この伝統と革新の絶妙なバランスこそが、時代を超えてファンを惹きつける最大の要因となっています。