SNSやガジェットコミュニティで「US配列にしたけれど結局JISに戻した」という告白を目にすることがあります。ミニマリスト的な佇まいに惹かれて勢いでカスタマイズ注文した初心者が、数週間で挫折してしまう背景には、認知心理学におけるマッスルメモリー(筋肉の記憶)とワーキングメモリの摩擦が存在します。
第1の挫折要因は、日本語入力切り替え時の「空振り」と「誤入力」です。JIS配列であれば、「かな」キーを押せば確実に日本語モードになり、「英数」キーを押せば確実にアルファベットモードになります。現在の状態を頭で覚える必要がありません。しかし初期状態のUS配列では、Controlキー+スペースキー、あるいはCaps Lockキーによるトグル操作(押すたびに交互に切り替わる方式)を強いられます。この結果、「英数で入力したつもりが画面にローマ字のまま平仮名が表示される」「BackSpaceで消してモードを切り替えて打ち直す」という2重の手間が日常的に多発し、集中力を削いでしまうのです。
第2の理由は、職場環境とのマルチデバイス衝突です。IT企業であってもバックオフィス業務や指定端末としてWindowsのJISキーボードが支給されるケースは依然として多く、「自宅の私物MacはUS配列、会社の支給PCはJIS配列」という二重生活を送ることになります。この環境下では、記号の「@」「:」「"」を入力するたびに指が迷い、タイピングスピードが劇的に低下します。人間の身体感覚はキーボードごとの配置差を瞬時に切り替えるのが難しく、結果的にどちらの端末でもミスタイプを連発するストレス地獄に陥るケースが後を絶ちません。