妊娠21週という週数が持つ最大の医学的・社会的重圧は、日本の母体保護法第14条が規定する中絶可能期間の境界線に位置しているという点にあります。日本国内における人工妊娠中絶の実施は、妊娠満22週未満、すなわち妊娠21週6日中絶タイムリミットと法律で厳格に定められています。22週0日以降は、いかなる医学的理由や染色体異常が存在しようとも、人工中絶は一切行えません。
ここに、21週の超音波スクリーニングで「何らかの異常」を指摘された家族が直面する、極めて過酷な構造的ジレンマが存在します。
胎児の染色体を確定させる唯一の手法である羊水検査は、採取した羊水中の細胞を培養するため、判定結果が出るまでに通常2〜3週間を要します。つまり、21週0日の時点で異常を指摘されてから羊水検査を申し込んでも、結果が出る頃には確実に妊娠22週を越えており、法律上の選択肢は実質的に消滅しているのです。迅速結果(FISH法やQF-PCR法)を併用すれば特定の染色体数異常を数日〜1週間程度で確認できる場合もありますが、それでも羊水検査確定診断リミットとしては極めて時間的猶予が乏しいのが実情です。
この時間的猶予のなさは、十分な遺伝カウンセリングやパートナーとの冷静な対話を阻害し、両親を追い詰める要因となります。超音波画像で指摘された所見がどのような医学的意味を持ち、どのような予後を辿るのか、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーの介在のもとで、迅速かつ慎重に現状を咀嚼する作業が求められます。