人事院が公表した「民間企業の勤務条件制度等調査」によると、社宅制度を導入している国内企業は41.6%、さらに従業員規模500人以上の大企業に限れば72.1%に達しています。かつて主流だった企業が自社で土地・建物を保有する「社有社宅」は、建物の老朽化や固定資産税・修繕コストの重荷から急速に姿を消しました。現在その受け皿として定着しているのが、民間アパートやマンションを活用する「借り上げ社宅」です。
借り上げ社宅とは、不動産の賃貸借契約を「企業名義(法人契約)」で締結し、その物件を従業員に住居として貸与(転貸)する福利厚生制度を指します。契約主体が会社であるため、入居時に求められる法人契約の審査基準では、企業の決算書(連続黒字か債務超過でないか)、資本金、設立年数、帝国データバンク等の評点が審査対象となります。個人契約に比べて信用力が高いため、敷金・礼金の交渉や優良物件の確保がスムーズに進みやすい点も特徴です。
ここで最も重要な論点が、借り上げ社宅と住宅手当の違いです。両者は「住居費を会社が支援する」という目的こそ同じですが、税務上は天と地ほどの開きがあります。
住宅手当は、給与明細に「住宅手当:月3万円」などと上乗せされて現金支給されるため、全額が「給与所得」として課税対象になります。額面が増える分、所得税や住民税が跳ね上がり、健康保険料・厚生年金保険料の算定基礎(標準報酬月額)も引き上げられてしまいます。結果として、支給された3万円のうち3〜4割が税・保険料で差し引かれ、手元には1万8,000円程度しか残りません。
対して借り上げ社宅は、会社が物件を借りて従業員に現物給付する形式を取ります。一定のルールを満たせば給与として課税されず、従業員の自己負担分は給与天引きされるため、課税対象となる給与額面そのものを引き下げる効果を生み出します。