大正時代は、怪奇現象やエソテリック(秘教的)な世界観を扱うバトル・ミステリー作品においても無二の輝きを放ちます。
メガヒットを記録した『鬼滅の刃』が世界的に受け入れられた背景には、刀剣によるチャンバラアクションの面白さに加え、「廃刀令が敷かれ、近代警察組織が存在する中で、政府非公認の鬼殺隊が人知れず夜の闇を駆ける」という大正特有の緊張感がありました。急速な電化によって都市部が照らされる一方で、一歩山間に入れば街灯すらない闇が支配する――この文明のグラデーションこそが、鬼や異能の存在に圧倒的な説得力を付与したのです。
また、大正ミステリーの潮流においては、江戸川乱歩や夢野久作らが台頭した時代の空気感を反映した作品群が根強い人気を誇ります。洋館の一室で起こる密室殺人、華族階級の愛憎劇、迷信深い寒村での呪詛など、「科学捜査の黎明期」だからこそ成立するロジックとオカルティズムの融合が、ミステリー愛好家の知的好奇心を刺激し続けています。