安価な手羽元が、なぜポン酢で煮込むだけで専門店の煮込み料理のように柔らかくなるのか。その秘密は、ミツカン味ぽんなどに代表されるポン酢しょうゆに含まれる「酢酸(お酢の主成分)」の生化学的アプローチにあります。
鶏手羽元は運動量の多い部位であるため、結合組織であるコラーゲンや太い筋繊維が密集しています。通常、これらを柔らかくするには数時間の長時間の加熱が必要ですが、酸性条件下(pHが低い環境)で加熱すると、コラーゲンの網目構造が急速にほぐれ、水溶性のゼラチンへと変性するスピードが飛躍的に加速します。
さらに、酸がタンパク質の保水性を高めるため、加熱によって水分が外へ逃げ出すのを防ぎ、ジューシーな肉汁を内部に閉じ込めます。食品メーカーの研究検証データでも、食酢を用いた煮込み調理によって肉の破断応力(噛み切るのに必要な力)が大幅に低減することが実証されています。硬くなりがちな手羽元にとって、ポン酢煮は理にかなった調理法なのです。