『花のち晴れ』のドラマ性を極限まで高めた要因は、音と晴を取り巻くライバルキャラクターの圧倒的な魅力と高潔さにありました。特に音の許婚であった馳天馬、そして晴に一途な想いを捧げ続けた西留めぐみ(メグリン)の結末は、今なお高く評価されています。
桃乃園学院の生徒会長であり、文武両道・容姿端麗を絵に描いたような完璧な貴公子・馳天馬。彼は近衛仁が引き起こした凄惨な襲撃事件や、音の心が晴へと傾いていく現実を前に、激しい苦悩と嫉妬に苛まれます。しかし最終的に天馬は、音が自分に向ける感情が「愛」ではなく「恩義と依存」であることを見抜いていました。
天馬は自らのプライドと音への真実の愛ゆえに、自ら婚約解消を申し出ます。「僕はもう、君の重荷になりたくない」。そう告げて微笑んだ天馬の姿は、作中もっとも気高く切ない瞬間でした。天馬はその後、国内外の視野を広げるべく新たな学問の道へと進み、誰の影も背負わない独立した指導者としての人生を歩み始めます。
一方、圧倒的な美貌と純真無垢な心で晴を愛し続けた人気モデルのメグリン。彼女は晴の心がどれほど音に向いていようとも、決して卑屈にならず正面からアタックを続けました。しかし、晴の音に対する想いが不可侵の領域にあることを悟った彼女は、最後は晴の背中を笑顔で見送る道を選びます。
失恋の痛手を抱えながらも、メグリンは芸能活動に専念し、トップモデルとしてのキャリアを力強く切り拓いていきます。「誰かの付属物」ではなく、自らの足で立つ表現者としての再出発。本作は選ばれなかった側のキャラクターに対しても、徹底して「個の自立と尊厳」を与える結末を用意していました。