『クレヨンしんちゃん』の劇場版シリーズには、数多くの個性的なヴィランが登場してきました。その中にあって、マカオとジョマが30年を経ても別格の扱いを受ける最大の理由は、「徹底した紳士的礼節と底知れない実力」のギャップにあります。
彼らは群馬県に建設した謎のテーマパーク「ヘンダーランド」を前線基地とし、地球侵略を企てる異次元の魔法使いです。手下のス・ノーマン・パーやチョキリーヌ・ベスタを巧みに操り、ヒロインであるメモリ・ミモリ姫(トッペマ・マペット)の魂を人形に封じ込めるなど、その侵略作戦は極めて周到でした。
しかし、物語終盤で野原一家と対峙した際、彼らは一方的な暴力でねじ伏せることをしません。「侵入者に対して一度は対等なルールのゲームで迎え撃つ」という独自のダンディズムを貫き、ダンス対決やトランプ勝負を受け入れます。この「絶対強者ゆえの余裕と美学」こそが、単なる悪党に留まらない気品を生み出し、成長した大人の鑑賞に耐えうる重厚な魅力となっているのです。