苗字「上村」を目にした際、真っ先に浮上するのが「うえむら」と「かみむら」のどちらが本流なのかという疑問です。結論から言えば、全国的な総数比率では「うえむら」派が約60〜65%、「かみむら」派が約35〜40%と推計され、全体としては「うえむら」が優勢に立っています。しかし、この数値を全国一様なものと捉えると、実態を見誤ることになります。
地域別の傾向を観察すると、境界線は極めて明瞭です。大阪府、兵庫県、京都府を中心とする関西圏や中部地方の一部では「うえむら」と名乗る世帯が8割前後に達します。上方文化圏において「上」の字を「うえ」と訓読する慣習が根強く定着していたことが、呼び名の固定化に寄与したと考えられています。
一方で、新潟県をはじめとする北陸・甲信越の一部、そして鹿児島県や宮崎県といった南九州エリアに足を踏み入れると、力関係は完全に逆転します。これらの地域では「かみむら」が8割から9割以上のシェアを占めるケースも珍しくありません。さらに極稀な事例として、東日本の一部集落に見られる「かんむら」や「こうむら」、あるいは音読みを交えた「じょうむら」といった変種も現存しており、日本語の音韻変化の歴史を今に伝えています。