ネット上のQ&Aコミュニティやショート動画では、ニキビ跡の赤み消しに関して皮膚科学的に極めて危うい情報が拡散されています。その最たる例が、「皮膚を強制的に剥がせば治る」という誤信に基づいた乱暴なピーリングや、過度なターンオーバー促進スキンケアの常用です。
サリチル酸や高濃度AHA、さらにはトレチノインや強烈なスクラブ洗顔を連日のように使い、角質を無理やり剥離させる行為は、火に油を注ぐに等しい暴挙です。角質層は外部刺激から真皮を守る唯一のシールドであり、これを破壊すると皮膚は「非常事態」を感知して炎症性サイトカインを大量放出します。その結果、真皮内の毛細血管はさらなる修復物質を運ぶために拡張・増生し、赤みは退色するどころか「毛細血管拡張症」として半恒久的な紅斑へと固定化してしまいます。
また、美肌への執着から生じる「過剰ケアの心理的罠」も見逃せません。赤みを一刻も早く消したいと焦るあまり、朝晩に何層もの美容液を強くすり込み、日中は手鏡を取り出して赤み部分を指で触って確認する。この無意識の物理的摩擦が、微小炎症を絶え間なく燻らせ続ける燃料となっています。皮膚科医の間では「触らないこと、擦らないことが最良の消炎剤」と口を揃えて指摘されますが、多くの自己流実践者は「何かを塗り足すこと」に固執し、「刺激を削ぎ落とすこと」を怠っているのが実態です。