野原ひろしの声優交代における直接の契機は、2016年8月に発表された初代声優・藤原啓治さんの突然の病気療養でした。当時、所属事務所のAIR AGENCYより「病気療養のため一時休業する」との公式発表がなされ、病名や詳細な容態は伏せられたまま、長期にわたる戦病生活に入ることとなりました。
1992年の放送開始以来、24年にわたってひろしの哀愁、情けなさ、そして家族を守る頼もしさを唯一無二のハスキーボイスで表現してきた藤原さんの離脱は、制作現場だけでなく全国の視聴者に大きな動揺を与えました。テレビ朝日およびシンエイ動画はキャラクターの出番を削ることなく作品を継続させるため、急遽代役の選定に着手。そこで白羽の矢が立ったのが、同年代の実力派であり藤原さんとも深い親交のあった森川智之さんでした。
2016年8月26日放送の第906話「しんのすけ対シン・ゴジラだゾ」から森川さんによるひろしが登場。当初はあくまで「藤原さんが戻るまでの代役」という位置づけであり、制作陣もファンも藤原さんの復帰を信じて祈り続けていました。しかし、闘病生活の末、2020年4月12日に藤原啓治さんが癌のため55歳の若さで逝去。この訃報を受け、代役として奮闘していた森川さんが正式にひろし役を永続的に引き継ぐこととなったのです。