インストルメントパネルに「給油してください」というメッセージが表示された、あるいは燃料計の給油機マークが点灯した段階において、自動車は直ちに走行不能に陥るわけではありません。日本の自動車メーカー各社は、国土交通省の技術基準やドライバーの安全確保を考慮し、警告灯点灯から最低でも約50kmは自力走行できる設計を長年のデファクトスタンダードとしています。
なぜ「50km」という数字が基準になっているのか。その最大の理由は、高速道路のサービスエリア(SA)に設置されているガソリンスタンドの配置間隔にあります。日本の高速道路網は、原則として約50km前後の間隔で給油所が配置されるよう設計されてきました。つまり「給油ランプが点いた瞬間、次の給油施設へ確実に滑り込める距離」として設定されているわけです。
ただし、ここで注意しなければならないのは、この「50km」という数値が極めて平穏な走行条件下における理論値に過ぎないという点です。給油ランプ点灯後の走行可能距離詳細まとめを分析すると、ストップ&ゴーの多い市街地、真夏や真冬のエアコン全開使用、上り坂が続く山岳路、あるいは猛烈な渋滞に巻き込まれた場合、実質的な限界距離は30km未満まで一気に縮退します。逆に、信号のないバイパスを時速60km前後で淡々と定速巡航できる環境であれば、80km以上走行できるケースも珍しくありません。「50km走る」と過信して給油を先延ばしにすることは、極めて危うい賭けと言わざるを得ません。