スポーツや日常生活のアクシデントで頻発する捻挫、打撲、肉離れ。かつてはスポーツ医学の現場で打撲や捻挫のRICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)が絶対的正義として盲信されてきました。しかし、世界的なスポーツ医学の権威である英国スポーツ医学雑誌(BJSM)の臨床データ提示以降、急性期における「冷やしすぎ」と「動かさなすぎ」が組織修復を遅らせる要因であることが浮き彫りになりました。
過度なアイシングは血管を過剰に収縮させ、損傷部位の修復に不可欠なマクロファージや各種成長因子の流入を遮断してしまいます。さらに、抗炎症薬(NSAIDs)の無分別な連用も初期の正常な炎症反応を抑え込み、組織の長期的強度を低下させることが判明しました。そこで打ち出されたのが、受傷直後の「PEACE」と、数日後からの回復期を支える「LOVE」という包括的プロトコルです。
特にアスリートを悩ませる肉離れの早期回復に関する真相も、この考え方に深く関係しています。筋線維の断裂後、最初の48〜72時間は圧迫(Compression)と保護(Protect)で内出血を最小限に抑えることが最優先されます。しかし、炎症のピークが過ぎた後は、ただ寝たきりで安静を保つのではなく、痛みのない範囲で筋肉に適切な負荷(Load)をかけ、患部へ血流を送り込む(Vascularization)ことが不可欠です。適切な負荷をかけることで筋線維が本来の走行に沿って整然と再編成され、瘢痕組織による筋肉の柔軟性低下や再断裂のリスクを大幅に軽減できます。