2000年代初頭、日本の生命保険業界は固いイメージと難解な約款に包まれていた。その壁を打ち破ったのが、アフラック生命保険株式会社が投じた一石だった。同社が世に送り出したアフラックCMシリーズ「よく考えよう」は、従来の生保広告が持っていた「死や病気への恐怖訴求」という暗いトーンを劇的に覆す。そこに彗星のごとく登場したのが、白いアフラックダックと、国民的喜劇人の志村けん、そして清新な魅力を放つ矢田亜希子だった。
撮影現場を知る関係者によれば、志村けんの凄みは「笑い」の計算し尽くされた緻密さにあったという。カメラが回る前、彼はアフラックダックの人形の動きや合いの手のタイミングをミリ単位で調整し、子どもからお年寄りまで一瞬で笑顔になれる間合いを模索し続けた。テレビCMの枠組みを超えたあの絶妙なリズム感は、稀代のコメディアンが持つプロフェッショナリズムと、若手実力派としてブレイク中だった矢田亜希子の瑞々しい演技が見事に噛み合った結果生まれた奇跡の産物だった。