猫の舌がザラザラな理由とは?痛い正体と毛づくろいの秘密を解剖

猫の舌がザラザラな理由とは?痛い正体と毛づくろいの秘密を解剖

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愛猫が飼い主の手や顔を丹念に舐めてくれる行動は、動物行動学において親愛の情を示す「アログルーミング(社会的毛づくろい)」や、飼い主の匂いと自分の匂いを混ぜ合わせるマーキング行動と解釈されます。しかし、この友好的なコミュニケーションが、人間と猫の双方に健康被害をもたらすケースが現場の獣医師から多数報告されています。

人間の皮膚に生じる「機械的擦過傷」と感染症リスク

「朝起きると愛猫が鼻や首元を舐めてくれていたが、鏡を見たら赤く腫れ上がってヒリヒリ痛む」という飼い主の声は知恵袋やSNSでも頻繁に投稿されています。皮膚が薄い目元、首筋、手首の関節部などは、糸状乳頭による連続的な摩擦によって角質層が物理的に削り取られ、接触性皮膚炎や擦過傷(ケガ)を生じることがあります。

さらに警戒すべきは、猫の口腔内に常在するパスツレラ菌(Pasteurella multocida)などの人獣共通感染症です。舌で削られて微小な傷が生じた皮膚組織から細菌が侵入すると、赤みや激しい腫れ、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を招く恐れがあります。特に免疫力が低下している高齢者や乳幼児が顔面を舐められた場合は、そのまま放置せず流水と石鹸で直ちに洗い流す衛生管理が求められます。

「かえし」構造が引き起こす猫側の健康被害「毛球症」

一方、舌のザラザラ構造は猫自身の体内にも重大な疾患の火種を抱え込ませています。糸状乳頭が喉に向かって傾斜している構造上、一度舌に絡め取った抜け毛は口から吐き出すことが物理的に不可能であり、猫はグルーミング中に絡め取った抜け毛を全量飲み込むしかありません。

換毛期(春・秋)や長毛種の個体、あるいは強い環境ストレスから自身を過剰に舐め続ける「過剰グルーミング(常同障害)」に陥った猫の場合、胃や小腸の中で毛が固まり、巨大な毛玉となる「毛球症(もうきゅうしょう)」を発症します。最悪の場合、腸閉塞を引き起こして開腹手術が必要となる事例も獣医療現場では日常茶飯事です。舌の構造が優秀すぎるからこそ、飼い主による定期的なブラッシング支援が生命線となります。

高橋 健太
著者

高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。