多発性骨髄腫は、血液細胞の一つである「形質細胞」ががん化し、異常な抗体(M蛋白)を産生しながら骨や内臓を侵していく病気です。以前は「診断後の中央生存期間が3〜5年」と語られていた時代もありましたが、2000年代以降の新規薬剤の登場により、臨床現場の風景は一変しました。
治療の中心となるのは、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ等)、免疫調節薬(レナリドミド等)、そしてがん細胞表面のCD38分子を標的とする抗体薬(ダラツムマブ等)の多剤併用療法です。さらに、65歳未満で主要臓器の機能が保たれている患者に対しては、強力な抗がん剤投与の後に自身の正常な幹細胞を戻す骨髄移植(自家末梢血幹細胞移植)が標準治療として確立されています。近年ではCAR-T細胞療法や二重特異性抗体といった次世代治療薬も臨床現場へ浸透し、治療選択肢は飛躍的に拡大しました。
多発性骨髄腫の病期分類(R-ISS:改訂国際病期分類)と、近年の臨床データに基づく病態・予後の目安は以下の通りです。
公的医療データや血液学会の報告を見ても明らかなように、多発性骨髄腫の生存率は世代ごとに右肩上がりを続けています。かつての古い医療統計に記載された「余命」の数値をそのまま現在の患者に当てはめることは、医学的にもはや無意味であり、過度な悲観は不要と言えます。