旅情をそそる「川自体が温かい温泉」というイメージとは裏腹に、カムイワッカの滝は古くから事故やトラブルが絶えない過酷な自然環境です。現場で旅行者が直面する主要なリスクは、大きく分けて3点存在します。
第一のリスクは、pH1.5〜2.0前後という極めて強い酸性度を持つ温泉水です。活火山である硫黄山から湧き出るこの水は塩酸・硫酸成分を主としており、肌の弱い人が触れると強いピリピリ感やかぶれを引き起こします。特に注意すべきは「目」への混入です。水飛沫が目に入ると激痛が走り、一時的に視界を奪われる危険性があります。足元の不安定な沢登り中に視界を失うことは、致命的な転落につながりかねません。
第二のリスクは、特異な地質による極端な滑りやすさと落石です。酸性の温水によって岩肌の苔や藻は生えにくいものの、温泉成分が沈着した岩盤は濡れると石鹸のようにツルツルと滑ります。傾斜のある沢を直登するため、踏み込みを誤った転倒による骨折や頭部打撲の事故が過去に多数報告されています。さらに、V字谷の地形上、上流や斜面からの自然落石リスクも常に警戒しなければなりません。
第三のリスクは、世界有数の生息密度を誇る知床のヒグマ対策です。カムイワッカ周辺はヒグマの日常的な採餌ルートと重なっており、道路上や沢沿いでの目撃情報が後を絶ちません。単独行動を避け、クマスプレーの携行や音による存在アピールを怠らない緊張感が求められます。