「以前なら密輸船の底やスーツケースの二重底に隠すのが常套手段だった。だが今のトレンドは、画面のタップ一つで完結する」——あるサイバー犯罪対策の専門家はこう言い切る。通信内容が自動消去されるTelegramやSignal、さらにはアクセスの難しいダークウェブ上の闇市場が、危険な薬品の取引場として機能している。
バイヤーたちは複数の偽名アカウントを使い分け、数分ごとにIPアドレスを偽装。注文から決済、配達手配までの全工程が、高度に暗号化されたチャットルーム内でシームレスに進行する。痕跡を残さないメッセージの送受信によって、売手と買手の双方が互いの本名すら知らぬまま、危険な化合物が国境を越えて行き交う構造が完成している。