ネット上の掲示板や知恵袋などでは、「Bボーイという言葉は死語になったのか?」という書き込みが散見されます。この疑問が生じる背景には、2010年代に起きたファッショントレンドの劇的な変化があります。タイトなスキニーパンツやノームコアの台頭によって、かつてのダボダボなストリートスタイルが一時的に姿を消したため、「B系=Bボーイ=過去の遺物」という連想が一般層に染み付いたのです。
しかし、ストリートダンスの現場に身を置くプレイヤーたちに取材すると、全く異なる声が返ってきます。
「自分たちがBボーイと呼ばれることに、死語だという感覚は1ミリもありません。それは野球選手をベースボールプレイヤーと呼ぶのと同じで、自分たちの生き方そのものの呼称だからです」(国内ダンスバトル大会常連の20代ダンサー)
決定的な転換点となったのは、2024年のパリオリンピックでした。競技名「ブレイキン」として正式採用された大舞台で、選手たちは「B-Boy Shigekix」や「B-Girl Ami」といったカルチャーネームを背負って世界中にその超絶技巧を披露しました。日本勢の金メダル獲得をはじめとする大躍進は、国内のメディア報道を一変させました。
ダンススクールにおけるブレイキンクラスの受講者数は急増し、SNS上の「#bboy」「#bgirl」タグは世界中で数千万件規模のインプレッションを記録。かつての「夜の街の不良カルチャー」という偏見は完全に払拭され、「超人的なフィジカルと音楽性を兼ね備えた表現者」としての認知が確立されています。
また、女性の実践者を指す「Bガール(B-Girl)」の存在感も目覚ましいものがあります。力技のパワーだけでなく、卓越した柔軟性と音楽への同調性を武器に、男性顔負けのフットワークを繰り出すBガールたちの活躍は、ストリートカルチャーがジェンダーの垣根を超えて成熟した証拠と言えます。