女子シングル史上で最も記憶に残る激闘となった2010年バンクーバー五輪と、2014年ソチ五輪。ここには、フィギュアスケートの採点規則(新採点システム=CoP)の過渡期における哲学の対立が色濃く刻まれていました。
浅田真央が求めたのは、女子選手にとって未知の領域であった大技トリプルアクセルの完成と技術的極限への挑戦でした。バンクーバー五輪においてショートとフリーで合計3度のトリプルアクセルを着氷させた実績は、今なお五輪史上の奇跡として語り継がれています。一方のキム・ヨナは、極めて高いジャンプの質、卓越したスピード、そして技の完成度を徹底して磨き上げ、出来栄え点(GOE)を最大化する戦略を完遂しました。
採点を巡っては、日韓両国のファンの間で長年論争が交わされました。基礎点を評価すべきか、技の完成度や演技構成点(PCS)を優先すべきかという議論は、新採点システムの構造的課題でもありました。しかし、選手本人たちは採点ルールの枠組みのなかで自らの信条を貫き通しました。採点問題という外野の騒音を置き去りにするほど、氷上の二人が放った輝きは純粋無垢なものでした。