一口に眉の痛みといっても、指が触れているピンポイントの位置によって、体内で起きている生理学的変化は大きく異なります。解剖学的な見地から部位ごとの特徴を整理すると、痛みの発生源が驚くほど明瞭に浮かび上がってきます。
まず、臨床現場で相談件数が際立って多いのが眉頭を押すと痛いというケースです。眉頭のすぐ内側の窪みには、東洋医学で眉毛のツボ攅竹(さんちく)と呼ばれる経穴が存在し、西洋医学的にも三叉神経の第一枝(眼神経)から分岐する「眼窩上神経」が頭蓋骨の小さな隙間(眼窩上切痕)から皮膚へと出てくる解剖学的ポイントに一致します。ここを指で押してズーンと響くような重だるい痛みがある場合、眼球を動かす外眼筋の緊張や、ピント調節を司る毛様体筋の酷使に由来する眼精疲労が第一に疑われます。さらに「目の奥が重い痛い」という圧迫感を同時に伴うなら、視神経周囲の血流停滞が極限に達している証拠です。
一方、眉頭から鼻根部にかけての眉間を押すと痛い状態や、前頭部の底面にあたる眉骨の痛みを覚える場合は、異なる病態への警戒が必要です。眉毛の奥にある頭蓋骨内部には「前頭洞(ぜんとうどう)」という空洞が広がっており、ここに鼻腔からの細菌やウイルスが侵入して膿が溜まると副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症、特に前頭洞炎)を引き起こします。前屈みになった際や頭を下げたときに眉骨の内側から突き上げるような拍動痛が生じるのが典型的な特徴です。
眉尻や眉毛の中央付近を押した際に、ピリッとした電撃のような鋭利な痛みが走る場合は、末梢神経の圧迫や過敏化が関係しています。また、触れた部位の皮膚表面が赤く腫れていたり、芯のようなしこりがある場合は、毛穴の奥で黄色ブドウ球菌などが繁殖した眉毛ニキビ毛嚢炎(もうのうえん)が原因であり、筋肉や骨の痛みとは明確に区別しなければなりません。