SNSや動画サイトでは「ヘアピンやゼムクリップ2本を使えば手提げ金庫は数分で開く」といった情報が散見されます。しかし、現役の鍵職人が語る実態はまったく異なります。
シリンダー内部のピンを押し上げるピッキング技術は、繊細なトルク調整と専用のテンションレンチがあって初めて成立する職人技です。針金やクリップなどの強度が足りない金属を鍵穴に無理やり挿入すると、内部で金属疲労を起こして先端が破断し、鍵穴内部を完全に塞いでしまうという最悪の事態を引き起こします。こうなると、シリンダー自体をドリルで破壊するしか選択肢がなくなります。
また、バールや大型ハンマーでこじ開ける「破壊開錠」には以下のような重大なデメリットが伴います。
- 金庫自体の再利用が不可能:強固な耐火材が砕け散り、扉のヒンジが歪むため二度と閉まらなくなります。
- 高額な廃棄コスト:耐火金庫は内部に特殊気泡コンクリートが含まれており、一般的な粗大ごみとしては出せません。産業廃棄物としての処分費用が1万〜3万円前後上乗せされます。
- 収納物の破損リスク:強引な打撃やサンダーによる切断熱で、内部に保管されていた権利証や紙幣、磁気メディアが焦げる危険性があります。