料理の基本となる計量スプーンですが、粉末状の食材を扱う際には特有の物理的トラップが存在します。まず基本となる公定基準から確認していきましょう。
文部科学省が策定する「日本食品標準成分表」や女子栄養大学などの調理科学データにおいて、きな粉大さじ1すりきり重さは「約7g」と定義されています。大さじスプーンの容積は15mlですが、水のように「1ml=1g」とはならず、きな粉の見掛け密度(空気を含んだ粉体の比重)は約0.45〜0.5g/ml程度にとどまるためです。同様に換算すると、きな粉小さじ1何グラムかという疑問に対しては、容積5mlに対して「約2.3g(約2g)」が正確な数値となります。
ネット上や家庭のキッチンで大きな混乱を招いているのが、「山盛りですくうと重さが倍近く変わる」という噂の真相です。編集部による実測検証および調理実験の結果、この噂は紛れもない事実であることが判明しました。
スプーンの縁で平らに削ぎ落とす「すりきり」に対し、袋からスプーンを勢いよく引き上げて山盛りにすくった場合、粉体の摩擦力(安息角)によってスプーンの上にドーム状のきな粉が積み上がります。このきな粉大さじ1山盛り違いを精密電子スケールで計測すると、実測値は12g〜14gに達します。つまり、何気なくすくった1杯は、レシピが意図した大さじ1(7g)のほぼ2倍に相当する量になってしまうのです。
さらに分量を増やしてきな粉大さじ2何グラムになるかを算出する場合、すりきりであれば約14gですが、無意識の山盛り2杯では25g〜28g前後にまで達します。お菓子作りにおいて生地がパサついてまとまらなくなったり、ドリンクに混ぜて溶け残りが大量に沈殿したりするトラブルの多くは、この「山盛り計量による粉の倍増」が根本原因です。