エピソードの舞台は、主人公の山岡士郎と栗田ゆう子が案内された一軒の古びたトンカツ屋「トン子」だ。そこに現れたのは、アメリカで大成功を収めた実業家の里見。彼は昔、貧乏な学生時代にこの店で無一文同然のところを店主に救われ、トンカツをご馳走になった過去を持っていた。成長して成功者となった里見が恩返しに訪れ、当時の店主の恩義を振り返る場面で、あの伝説のセリフが語られる。
単なる大食い勝負や料理の味比べではない。1杯の食事が人の人生をいかに変えうるかという密度の高いドラマだ。山岡士郎もまた、食事の技術や贅を極めた味覚だけでなく、「食卓が持つ人間らしさ」を重んじる人物としてこのエピソードに寄り添う。作中で提示されたのは、どんなに高級な食材よりも、空腹時に差しのべられた温かいトンカツ一皿が持つ圧倒的な救いだった。