アジアのスナック史を語る上で欠かせないのが、ハニーバターチップとの違いに関する議論です。2014年後半から2015年にかけて、韓国全土で空前の品薄社会現象を巻き起こし、有名アイドルやセレブがSNSに投稿したことで社会問題にまで発展した「ハニーバターチップ(허니버터칩)」。一時は「韓国のオリジナル商品をカルビーが真似たのか?」という言説がネット上を駆け巡りましたが、事実は正反対です。
ハニーバターチップを開発・製造したのは、韓国の大手製菓会社「ヘテ製菓」と「カルビー」の合弁企業である「ヘテ・カルビー」です。当時、韓国スナック市場のテコ入れを図るプロジェクトにおいて、ヘテ側が日本のカルビーで爆発的人気を博していた「ポテトチップス しあわせバタ~(2010年登場)」の味設計に着目。「この甘じょっぱいイノベーションを韓国市場向けにローカライズできないか」と持ちかけ、カルビーの技術指導とフレーバー知見を投入して誕生したのが「ハニーバターチップ」でした。
両者の間には、ターゲット層の食文化に合わせた緻密な設計の違いが存在します。
- 韓国版「ハニーバターチップ」:フランス産の発酵グルメバター(12時間発酵)と、韓国産のアカシア蜂蜜を前面に押し出しています。日本のしあわせバタ~よりもバターの油脂感とハチミツのダイレクトな甘みが強く、リッチかつ濃厚で、ガツンと響くインパクト重視の仕上がりです。
- 日本版「しあわせバタ~」:バターとはちみつを軸にしつつも、隠し味のマスカルポーネチーズで奥行きを与え、パセリで視覚と後味のキレを整えています。何枚食べても食べ飽きない「抑制の利いた調和(バランス)」を重視した繊細な味わいです。
ルーツは日本のカルビーにありながら、国境を越えたカルチャライズによって双方が独自の個性を確立した好例といえます。