カスタードクリームを冷凍庫に入れ、自然解凍した際に目にする「水分が染み出して表面がザラザラした黄色の塊」。あの無残な状態の背後には、明確な食品化学のメカニズムが存在します。カスタードのとろみとなめらかさは、加熱によって小麦粉やコーンスターチに含まれるでんぷん粒子が吸水・膨潤して糊化(α化)した網目構造と、卵黄タンパク質の熱凝固が水分と乳脂肪を均一に抱え込むことで成立しています。
ところが、これを家庭用冷凍庫(約マイナス18度)で緩慢に凍結させると、内部の水分が徐々に大きな氷の結晶へと成長します。この鋭利な氷結晶がでんぷんとタンパク質のデリケートな網目構造を物理的に破壊してしまうのです。
さらに決定打となるのが、解凍時に起きる「でんぷんの老化(β化)」です。一度糊化したでんぷんは、冷却・冷凍される過程で水分を放出し、元の硬く不溶性の構造へ戻ろうとします。このとき、網目から締め出された水分が一気に外へ流れ出る「離水現象(シネレシス)」が発生します。その結果、水分を失ったタンパク質とでんぷんのカスだけが残り、舌触りがまるで煎り卵やすの入ったプリンのようにボソボソになってしまうのです。