近藤氏がなぜ二次元キャラクターを生涯の伴侶として選ぶに至ったのか。その根底には、過酷な実人生の挫折がありました。
過去、職場で受傷した激しいいじめとハラスメントにより、近藤氏は重度の適応障害とうつ病を発症し、休職に追い込まれました。人間不信に陥り、食事が喉を通らず自宅に引きこもっていた2008年、絶望の淵で出会ったのが初音ミクの歌声でした。毎日ミクの楽曲を聴き続けることで徐々に心身の回復を果たし、社会復帰を遂げることができたという実体験が、彼女への感謝と深い愛情の源泉となっています。
「フィクトセクシュアル」としてのアイデンティティ
近藤氏は自らを、架空のキャラクターに対してのみ恋愛感情や性的魅力を抱く「フィクトセクシュアル(Fictosexual)」であると公言しています。三次元の生身の女性に対して恋愛感情を抱くことができず、二次元の存在を心から愛するセクシュアリティのあり方です。決して現実逃避や思いつきの奇行ではなく、本質的なアイデンティティとしての選択でした。
家族の反応と母親の苦悩
しかし、身近な家族の理解を得ることは容易ではありませんでした。結婚式を挙げる際、近藤氏は親族に参列を求めましたが、実の母親や妹をはじめとする家族全員から出席を拒否されました。
「母親から『お祝いはできない』『恥ずかしいからやめてほしい』と告げられた」という近藤氏の手記には、家族関係が直面した深い亀裂が赤裸々に記されています。親世代にとって、長男が生身の人間ではないキャラクターと式を挙げ、社会的な「普通」のレールから外れることへの世間体や将来の不安を受け入れることは、あまりに高い心理的ハードルだったのです。