外食情報を収集する際、多くの人が無意識に陥っている重大な認知バイアスが存在します。その最たるものが、「行列が長ければ長いほど名店である」という思い込みです。
現代の飲食ビジネスにおいて、行列は意図的に作り出せるマーケティング手法の一つとなっています。店内席数が12席しかない狭小設計にし、券売機のUI(操作画面)をあえて複雑にして注文に時間をかけさせ、店外に人を滞留させることで「人気店」としての外観を演出する事例は枚挙にいとまがありません。一方で、40席以上ありオペレーションが完璧に整っている老舗は、回転が早いため外に行列ができず、初見の旅行客からは素通りされてしまうケースが多々あります。
また、「SNSで動画が数十万回再生されている店」に対する盲信も危険です。動画クリエイターへの試食招待や宣伝委託費を投じている店舗の場合、食材原価よりも広告宣伝費に資金が投じられている構造があります。動画で強調される「チーズが伸びる演出」や「過剰なトッピング」は、味の深みとは無関係であることがほとんどです。画面越しの刺激ではなく、地元紙のコラムニストが数行で触れているような地味な記述にこそ、真の銘店が眠っています。