宮中三殿の維持と祭祀の準備・進行を担っているのは、宮内庁の一般公務員ではありません。皇室の私的職員として雇用されている専門組織「掌典職(しょうてんしょく)」です。
掌典職のトップである掌典長のもと、掌典、掌典次長、そして女性神職である「内掌典(ないしょうてん)」が配置されています。かつて内掌典を務めた関係者の手記や関係者への取材記録によると、賢所を中心とする三殿奉仕の日常は、現代社会とは完全に切り離された古代の時間の流れの中にあります。
内掌典は三殿の敷地内にある「内掌典詰所」に居住し、外部との私的な通信や接触を極力断ち、朝夕の神饌(食事)の調理から神殿の清掃、装束の管理に至るまで一切の奉仕を伝統作法通りに遂行します。調理の火にはマッチやライターではなく、木と木を擦り合わせて起こす「燧火(きりび)」を用いるなど、徹底した清浄と伝統保持が貫かれています。宮中三殿の厳粛さは、こうした名もなき奉仕者たちの献身的な潔斎と規律によって24時間365日維持されています。