役者としての輝かしいキャリアの一方で、中村梅雀を語る上で欠かせないのが「ベーシスト」としての顔だ。ジャズやフュージョンをこよなく愛し、プロ顔負けのテクニックを持つ彼は、なぜ伝統芸能の家系にいながら音楽にのめり込んだのか。そこには、偉大な父や祖父の影から一時的に逃れ、自分自身のアイデンティティを確立するための葛藤があった。
「中村梅之助の息子」というレッテルから離れ、四本の弦の上で己を表現する時間は、彼にとって救いであり、新たな創造の源泉となった。現在では、その音楽的センスが役者としてのリズム感やセリフ回しにも還元されており、独自の芸風を支える重要な柱となっている。