日本の器文化には、相反しながらも互いを高め合う二つの美意識が存在する。一つは、無名の職人が作る日常の雑器に美を見出した民藝運動の思想だ。栃木県益子を拠点に活躍した人間国宝の濱田庄司は、健やかで力強い美を器に込め、庶民の暮らしに寄り添う作品を残した。素朴でありながら揺るぎない存在感を放つその作品は、現代のライフスタイルにも深く響く。
もう一方は、卓越した技法と美の極致を追及する伝統工芸の系譜である。その象徴とも言えるのが、赤絵磁器の最高峰として名高い酒井田柿右衛門だ。余白の美を極めた「濁手(にごりで)」の素地に描かれる優美な草花文様は、時代を超えて世界中の人々を魅了し続けている。日常の「用の美」を重んじる民藝と、極限の美を追求する伝統工芸。この両端を知ることで、自分の感性がどちらの美学に惹かれるのかが鮮明になるはずだ。