ITストラテジスト試験(ST)において、一般に提示される勉強時間の目安は「200〜500時間」とされます。しかし、この数値を額面通りに受け取るのは危険です。実態を深掘りすると、受験者がこれまでに培ってきたキャリアや前提知識によって、必要となるリソースは大きく二極化しています。
大手資格指導校STUDYingの調査データや合格体験記の集積結果によると、すでに上流工程やITコンサルティングの現場で3〜10年のキャリアを積み、経営層への提案書作成に慣れている経験者の勉強時間は、150〜200時間程度で十分に合格水準へ到達しています。中には応用情報技術者試験や他の高度区分を直近で突破し、午前I試験の免除権利を持つことで、100時間前後の超短期で合格を掴み取る猛者も存在します。
対照的に、プログラミングやインフラ構築のみを担当してきた技術者や、非IT部門の営業職・企画職といった初学者の勉強時間は、500〜1,000時間以上を要するケースが珍しくありません。IPAが発表している統計資料において、ITストラテジストの合格率は例年15%前後で推移しており、受験者の平均年齢はおよそ40歳前後。数ある高度情報処理技術者試験の中でも極めて成熟したプロフェッショナルが競い合う土俵だからこそ、知識の有無だけでなく「ビジネスモデルを構造化して捉える思考体力」の差が学習時間の開きとして残酷に表面化します。
初学者がつまずく最大の要因は、専門用語の難しさではなく「発想の転換」にあります。仕様書通りに正しく動くシステムを構築する思考(エンジニア視点)から、事業課題を解決して企業の収益や競争力を最大化する思考(経営・ストラテジスト視点)への脱皮が必要です。この認知の枠組みを根底から作り替えるプロセスこそが、数百時間におよぶ勉強時間の差を生み出しています。