SNSや動画プラットフォームにおいて定期的に拡散される極めて危険なデマが、「メラミンスポンジを小さく切って擦ると、一瞬で歯の黄ばみが落ちて白くなる」という裏ワザです。日本歯科医師会や審美歯科の専門医が幾度となく警鐘を鳴らしているにもかかわらず、手軽さと即効性を信じた一般ユーザーによる事故が絶えません。
改めて強調しますが、歯や人体への危険性は極めて甚大です。歯の最表面を覆うエナメル質のモース硬度は約5〜6であり、メラミンフォームと同等の硬さを持っています。メラミンスポンジで歯を擦れば、ステイン(着色汚れ)とともに保護層であるエナメル質そのものを物理的に削り取ることになります。
エナメル質は一度削れると、生体反応によって再生することはありません。削れて薄くなったエナメル質の下から象牙質が露出すれば重度の知覚過敏を引き起こし、冷たい水や風が当たるだけで激痛が走るようになります。さらに、表面に無数の微小傷が刻まれるため、数週間後には以前よりも着色汚れが入り込みやすくなり、取り返しのつかない変色と虫歯リスクを背負うことになります。
また、メラミン樹脂の安全性そのものに関しても正確な理解が必要です。「メラミン」や「ホルムアルデヒド」という化学物質名から発がん性や毒性を不安視する声がありますが、完全に重合・硬化された完成品のメラミンフォームから有害物質が通常使用で溶出することはありません。日本の食品衛生法に基づく器具・容器包装の規格基準もクリアしています。危険なのは物質としての化学的毒性ではなく、「生きた皮膚や粘膜をヤスリで擦り削る」という物理的破壊作用であることを認識しなければなりません。