「韓国のかき氷は、食べる前にスプーンで原型がなくなるまでグチャグチャにかき混ぜるのが本場のマナーである」――日本のガイドブックやSNSで長年語り継がれてきたこの言説は、現代の韓国においては半分正解で、半分は時代遅れの誤解となっています。
この認識ギャップが生まれた背景には、氷の質の劇的な進化があります。かつてのピンスは、荒削りの硬い水氷を使用していたため、そのままでは味にムラが生じ、シロップや小豆、練乳と氷をしっかり混ぜ合わせなければ美味しく食べられませんでした。ビビンバに代表される「混ぜ合わせる(ピビム)食文化」の文脈からも、豪快にかき混ぜることが理にかなっていたのです。
しかし、現在の主流である「雪花氷」や「糸かき氷」は、氷自体に牛乳や練乳の味が均一に含まれています。この繊細な氷を最初から激しくかき混ぜてしまうと、氷の中に含まれる空気の層が押し潰され、急激に溶けてドロドロの液体へと変わってしまいます。
現地のパティシエやカフェ愛好家の間では、現在以下の食べ分けが常識となっています:
- クラシックな氷水ベースのパッピンス:従来通り、具材と氷を軽く混ぜ合わせながら一体感を楽しむ。
- 最新のミルクピンス・糸かき氷・マンゴーピンス:上部のフルーツやトッピングと氷を一緒に、「混ぜずに上から静かにすくって」食べる。
添えられている練乳(ヨニュ)も、最初からすべて回しかけるのではなく、食べ進めてトッピングが減ってきた中盤からかけるのが、繊細な口溶けを最後まで損なわない通の作法です。