昭和の歌謡界を席巻した若い頃と現在の姿を比較し、ネット上では「太った」「まるで別人のようだ」といった安易な声が散見されます。かつて中性的な美貌と奇抜なメイク、パラシュートを背負ったド派手な衣装で世間の度肝を抜いたジュリーを知る世代からすれば、現在のふくよかなシルエットや豊かな顎髭に驚きを覚えるのも無理はありません。
しかし、この白髪と髭を隠さず、増量した体型すらも表現力に変えてしまうスタンスこそが、現在の沢田研二が放つ唯一無二のカリスマ性の源泉です。芸能界にありがちな不自然な若作りやアンチエイジングの施術には一切頼らず、年相応にしわを刻み、白髪をなびかせる姿は、むしろ海外の一流ブルースマンや伝説的ロックシンガーを彷彿とさせます。
その円熟味が見事に結実したのが、単独主演を務めた映画『土を喰らう十二ヵ月』(2022年公開)でした。長野の山荘で自給自足の生活を送りながら、季節の恵みを料理し、生と死を見つめる作家・ツトム役を熱演。無駄な贅肉や装飾をそぎ落とした演技が高く評価され、第96回キネマ旬報ベスト・テンで主演男優賞を受賞しました。当時の映画関係者は「カメラの前に立つだけで、人生の年輪と豊かな人間性が匂い立つような稀有な俳優」と絶賛の声を寄せています。現在の沢田研二は、美貌に依存していたアイドル時代を自らの手で脱構築し、人間そのものの引力で観客を魅了する本物の表現者へと到達しているのです。