鉄筋コンクリートにおけるかぶり厚さとは、内部に配筋された主筋や帯筋(あばら筋・フープ)の「最外縁の表面から、これを取り囲むコンクリートの外面までの最短距離」を指します。コンクリート部材そのものの厚み(幅や奥行き)と混同されがちですが、部材の厚みではなく「鉄筋を覆っているコンクリートの被膜の厚さ」のことです。
鉄筋とコンクリートは、互いの弱点を補い合う理想的な複合材料です。鉄筋は引張力に強く熱に弱い一方、コンクリートは圧縮力に強く火災に強いものの、引張力には極めて脆い性質を持っています。そして化学的な観点で見ると、コンクリート内部は強アルカリ性(pH12〜13程度)に保たれており、この強アルカリ環境によって鉄筋表面に「不動態被膜」と呼ばれる極薄の酸化皮膜が形成され、サビの発生を防いでいます。
しかし、大気中の二酸化炭素(炭酸ガス)がコンクリート内部に徐々に浸透すると、水酸化カルシウムと反応して炭酸カルシウムへと変化し、アルカリ性が失われていくコンクリートの中性化が進行します。中性化領域が鉄筋表面に到達した瞬間、不動態被膜が破壊されて鉄筋が腐食・膨張し、コンクリートを内側から破壊し始めます。かぶり厚さは、まさにこの中性化前線が鉄筋へ到達するまでの「防衛猶予時間」を稼ぐための物理的バリアなのです。