先天性耳瘻孔と向き合う当事者たちの声を集約すると、単なる医学的なデータだけでは測れない生活上の切実な悩みと心理的負担が浮かび上がってきます。
SNSや医療相談コミュニティで頻繁に投稿されている生の声には、独特の苦悩が表れています。
「子どもの頃から耳の穴の臭いがコンプレックスだった。満員電車や恋人と顔を近づける瞬間に『臭っているのではないか』と恐怖になり、無意識に耳の穴をティッシュで触る癖がついていた」(20代女性・会社員の手記より)
「痛くも痒くもなかったので30年間放置していたが、残業続きで疲れが溜まった週末、突如として耳の前がゴルフボール大に腫れ上がった。枕に耳が触れるだけで激痛が走り、夜も眠れず救急車を呼ぼうかと思ったほど。切開されて大量の膿が出たときの痛みと屈辱感は二度と味わいたくない」(30代男性・エンジニアの手記より)
現場取材を通じて見えてくるのは、「一度でも腫れた経験を持つ患者のほぼ全員が、もっと早く手術しておけばよかったと述懐している」という現実です。激しい腫れと切開排膿の痛みを経験した当事者は、「いつ再発するか分からない」という時限爆弾を抱えたような慢性的な恐怖に苛まれることになります。
また、術後の傷跡に関するリアルな経過についても知っておくべきです。現代の手術技術では、耳の付け根の窪みに沿って切開線を設計するため、術後半年から1年も経過すれば、第三者が凝視してもほとんど傷が分からないレベルにまで回復するケースが主流です。痛みの恐怖や傷跡の心配から手術を先延ばしにし、結果的に何度も感染を繰り返して周囲の皮膚を凸凹に傷つけてしまうことこそが、長期的な整容面における最大の不利益であると言えます。