映画『稲村ジェーン』を語る上で、日本音楽史に燦然と輝くサウンドトラックの存在を外すことはできません。同名サウンドトラック盤は累計売上130万枚を超えるミリオンセラーを記録し、映画本編を未見の世代にも桑田メロディの金字塔として受け継がれています。
特に主題歌である『真夏の果実』は、桑田佳祐自身が「生涯で最高のメロディが降りてきた」と述懐するほどの奇跡的な名曲です。映画のラストシーン、哀愁漂う夕景の波打ち際に流れるイントロの哀感は、多くの観客の涙を誘いました。数々のトップアーティストによってカバーされ続けるこの楽曲は、映画という枠組みを超越し、日本の夏を象徴するスタンダードナンバーへと昇華しています。
さらに、映画の冒頭や重要な場面で流れる『希望の轍』は、小林武史氏による印象的なピアノイントロから疾走感あふれるビートへと展開する屈指のアンセムです。JR茅ヶ崎駅の発車メロディにも採用されたこの曲は、実は映画劇伴の一曲として書き下ろされたものでした。桑田佳祐は映画監督としての葛藤を抱えながらも、映画音楽作家としては日本映画史上でも稀に見る完璧な仕事を成し遂げていた事実が浮き彫りになります。