『Nのために』安藤がドアチェーンをかけた真の理由と切ない結末

『Nのために』安藤がドアチェーンをかけた真の理由と切ない結末

『Nのために』安藤がドアチェーンをかけた真の理由と切ない結末の見逃せないポイントを徹底的にカバーしました。

事件の幕引きにおいて、読者・視聴者が最も胸を締め付けられるのが、「なぜ安藤だけが真相を知らされなかったのか」という点です。希美、成瀬、西崎の3人は事件の全貌を共有し、西崎は懲役10年という重い代償を支払いました。にもかかわらず、悲劇の引き金を引いた安藤だけが、完全に蚊帳の外に置かれました。

部屋に踏み込んだ希美は、外側からチェーンが掛けられていた事実と、現場に残された将棋の駒や安藤の痕跡から、チェーンを掛けたのが安藤であると即座に見抜きます。もし警察の現場検証で「ドアチェーンが外から掛けられていた」ことが証明されれば、チェーンを掛けた人物——すなわち安藤望が捜査線上に浮上します。過失致死や監禁致死、あるいは事件の重要参考人として取り調べを受ければ、安藤の前途洋々たるキャリアは完全に崩壊し、彼の真っ直ぐな人生に消えない傷が残ることは明白でした。

希美にとって、安藤望という存在は特別なものでした。過酷な貧困と家庭崩壊を経験し、常に日陰の道を這い上がってきた希美にとって、安藤は「どこまでも前向きで、努力が報われると信じ、光の当たる上を目指して歩む太陽」そのものでした。希美自身は自らの手を汚し、嘘を重ねて生きてきた自覚があるからこそ、安藤望だけは決して暗闇に引きずり込んではならない、罪の汚れを知らない場所で輝き続けてほしいと願ったのです。

希美は西崎に対し、「チェーンは最初から内側から掛かっていたことにしてほしい」と懇願します。自らのトラウマから奈央子を救えなかった後悔に苛まれていた西崎もまた、その希美の願いを受け入れ、自らがすべての罪を被って服役する道を選びました。安藤を守り抜くこと——それこそが、杉下希美が安藤望に捧げた、生涯で最も尊く、最も残酷な愛の証でした。

高橋 健太
著者

高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。