豊島岡を語る上で欠かせないのが、1940年代から続く「運針」の習慣だ。毎朝のホームルーム前、全校生徒が無言で一尺の白布に赤い糸を縫い進める。制限時間はわずか5分間。この極めてシンプルな所作が、目まぐるしい現代社会に生きる生徒たちの精神的なアンカーとなっている。
針先にだけ意識を集中させ、雑念を払う。この毎日の儀式は、心理学でいう「マインドフルネス」そのものであり、試験本番の極限状態でも動じないメンタルタフネスを育てる。糸の目の揃い具合からその日の自分のコンディションを知り、感情をコントロールする術を、生徒たちは日々の営みの中で自然と身につけていく。