このダムを単なる治水施設からエンターテインメントの舞台へと押し上げた立役者が、群馬県知事の山本一太だ。就任以来、群馬の観光資源を徹底的にデジタル化して発信する戦略を打ち出し、YouTubeの生配信や知事自らの現地レポートを通じて、若年層やネットユーザーへ八ッ場ダムのポテンシャルを強烈にアピールしてきた。
メディアによる火付け役として決定打となったのは、NHKの人気教養番組「ブラタモリ」の放映だった。浅間山の天明大噴火がもたらした火砕流や泥流が削り出した吾妻渓谷の険しい地形、その特異な地質こそがダム建設地に選ばれた科学的理由であると解き明かされたことで、地質ファンや歴史クラスタの好奇心に火がついた。
YouTube上には、ドローンで撮影された4Kの堤体映像や、普段は立ち入れないキャットウォーク(点検用通路)を歩くPOV動画が無数に投稿されている。画面越しに予習を重ねた旅行者たちが、「あの段丘を見たい」「ブラタモリでタモリさんが立っていたあの断崖の前に立ちたい」と、答え合わせのように現場へ足を運んでいる。