大手IT企業やコンサルティング会社を中心に、テキストコミュニケーションの質を見直す動きが広がっています。チャットツールにおいて「了解しました」「対応願います」といった極限まで削ぎ落とされたメッセージが飛び交うなか、社員間での心理的軋轢が顕在化しているためです。
都内のメガベンチャーで人事責任者を務める30代女性は、社内取材に対して次のような現場の実情を明かしました。
「SlackやTeamsなどのツール導入当初は短文・即レスが正義とされていましたが、結果として『威圧的に感じる』『新人が委縮して相談できない』という問題が多発しました。そこで依頼文に『お手数ですが』『お知恵を拝借できますか』といった大和言葉のトーンを意識的に混ぜるようマネジメント層に推奨したところ、チーム内の心理的安全性が著しく改善しました」
一方で、SNSやネット掲示板(知恵袋やオープンコミュニティ)を調査すると、大和言葉の取り入れ方に対する批判や戸惑いの声も少なくありません。 「結論を急いでいるトラブル対応時に『お心に留めていただければ』と遠回しに言われ、何をしてほしいのか分からず混乱した」 「若手がマナー本を丸呑みして、文末に『お取り計らいのほど』を不自然に連発していて慇懃無礼に感じる」
言葉の専門家やコミュニケーション心理学の観点からも、大和言葉は「文脈の共有(ハイコンテクスト)」を前提とする言語であることが指摘されています。状況を客観的に見極めず、単なる装飾として濫用すれば、かえって真意が伝わらなくなる危険性を孕んでいます。