口元の突出感に悩む人々が医療の門を叩く際、臨床の現場でもパラダイムシフトが起きている。日本矯正歯科学会の学術大会や臨床報告で近年強調されているのは、単に前歯を機械的に後退させることが必ずしも患者の審美的な満足につながらないという現実だ。
過度な抜歯を伴う歯列矯正によって前歯を内側へ引き込みすぎた結果、口元が平坦になりすぎて貧相な印象を与えたり、ほうれい線が深くなってしまう「口元難民」とも呼ぶべきケースが課題視されてきた。そのため現在の審美歯科では、デジタルシミュレーションを駆使し、軟組織(唇や皮膚の厚み)と歯列の移動限界を厳密に見極めるアプローチが主流となっている。突出をゼロにするのではなく、噛み合わせの健全性を確保しながら、あえて唇の肉感を残すようなミリ単位のコントロール。骨格を殺さず活かす設計こそが、洗練された横顔を生み出す裏技として支持を集めている。