一方で、医療現場では「黒い便が出た」とパニックになって駆け込んだものの、検査の結果病的な出血ではなかったという事例も少なからず存在します。代表的な誤解の要因を整理しておくことは、不要な混乱を避けつつ真の異常を嗅ぎ分けるために不可欠です。
便を黒く変色させる日常的な要因として、まず挙げられるのが鉄剤や貧血治療薬、ビスマス製剤(胃薬)の服用です。貧血治療で処方される鉄剤は、吸収されなかった過剰な鉄分が酸化されて便を暗緑色〜黒色に染め上げます。また、前日に大量の焼き海苔、イカスミ料理、赤ワイン、ブルーベリー、活性炭サプリメントなどを摂取した場合も、便がタール便そっくりの黒褐色を帯びることがあります。
食事性・薬剤性の黒色便と、真の消化管出血によるタール便を見分ける決定的なポイントは「便の性状」と「全身症状」です。食事や鉄剤が原因の場合、便の硬さは通常の有形便であることが多く、悪臭も通常の範囲内に留まります。対して、消化管出血に伴うタール便はドロッとした粘度を持ち、光沢を帯びたコールタール状であり、鼻を突く特異な血生臭さがあります。少しでも疑わしい場合は、自己判断で摂取物のせいにせず、スマートフォンのカメラで便の写真を撮影して医師に提示するのが最も確実です。