開幕直前まで「有観客」の可能性が模索されていた東京五輪において、首都圏会場の無観客開催が最終決定されたのは2021年7月8日、開幕わずか15日前のことでした。政府、東京都、大会組織委員会、IOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)による5者協議の末に出されたこの結論は、国内外に大きな衝撃を与えました。
決断を決定づけた最大の要因は、東京都内における新規感染者数の急増と、それに伴う4回目の緊急事態宣言発令でした。専門家分科会による「無観客開催が最もリスクが低い」という強い提言に加え、世論調査で大会中止・再延期を求める声が過半数を占める中、政権維持と安全確保のバランスに迫られた官邸主導の政治判断が働いた形です。
この決定により、見込んでいた約900億円のチケット収入がほぼ消失。組織委員会の財政は大幅な計画見直しを強いられ、会場周辺の飲食店や観光業界が期待していたインバウンド需要も完全に消滅することとなりました。