漢字学の世界的権威である白川静博士の古代文字研究によれば、「密」のルーツは神を祀る静寂な空間や、隙間なく詰まった状態を表す造形にまで遡る。宀(屋根)の下で密やかに執り行われる儀礼の神聖さが、文字全体の締めつけられた緊迫感ある構造に投影されているのだ。白川静博士の示してくれた文字の成り立ちを知ると、一画一画に込められた意味が立ち上がってくる。
一方、現代の書道界を牽引する武田双雲氏は、筆順が持つ「美のメカニズム」を次のように説く。「筆順通りに運筆することで、筆の勢い(気脈)が自然と途切れずに連なり、文字全体に力強い生命感と調和が宿る」。武田双雲氏の言葉が示す通り、定められた書き順を守る行為は、美文字への最短距離であると同時に、日本の伝統的な書の美学を体現するアプローチでもある。