主人公の西郷吉之助(隆盛)を演じた鈴木亮平の役作りは、まさに伝説と呼ぶにふさわしい。青年期の俊敏で引き締まった薩摩隼人から、奄美大島での過酷な潜居生活、そして晩年の堂々たる巨躯へと変貌していく姿は、CG全盛の時代にあって肉体そのものを削り、肥大化させる壮絶なアプローチだった。体重の増減幅は実に20キロ以上。画面越しに伝わる圧倒的な重量感と眼光の深さは、観る者を圧倒した。
だが、鈴木が捧げたのは肉体だけではない。「西郷という人物を誰よりも愛し、理解する」という愚直なまでの誠実さで現場を牽引した。共演者やスタッフへの細やかな気配り、現場の空気を瞬時に温める人柄は、劇中の吉之助そのもの。彼の持つ求心力こそが、過酷な撮影現場を1年間支え続けた柱であったことは疑いようがない。