時透無一郎の直接的な死因は、黒死牟の全方位攻撃によって受けた「胴体の切断(両断)」に伴う過度出血および内臓破壊です。単なる敗北ではなく、味方に勝機を手繰り寄せるための捨て身の突撃の代償でした。
玄弥や実弥、悲鳴嶼が全力を尽くしてもなお圧倒的な力を誇る黒死牟に対し、無一郎は間合いを一気に詰め、自らの身体を犠牲にして懐へ飛び込みます。無一郎の日輪刀が黒死牟の胴体を貫いた瞬間、黒死牟の肉体から無数に生えた刀刃による激しい斬撃が炸裂。無一郎は右足を失い、さらに胴体を腰から真っ二つに切断されるという致命的な損害を被りました。
通常の人間であればショック死、あるいは即座に絶命するはずの重傷を負いながらも、無一郎の精神は死んでいませんでした。自らの下半身が切り離された状態のまま、黒死牟に突き刺した刀の柄を両手で握り締め続けました。そして死の淵で全身の握力を極限まで高め、日輪刀を赤く染める「赫刀(かくとう)」を自力で発現させたのです。
この赫刀による強烈な熱と灼熱の激痛が黒死牟の強靭な再生能力を著しく低下させ、内臓を焼き尽くしました。無一郎が動きを封じ、玄弥が血鬼術の樹木で拘束した決定的な隙を見逃さず、悲鳴嶼と実弥が黒死牟の頸を落とすことに成功します。鬼狩りの勝利をその手で決定づけた瞬間、無一郎はすでに言葉を発することもできないほど命の灯火を擦り減らしていました。